世界の美しい水辺を五感で感じる新感覚エンターテインメントの都市型水族館カワスイ。
アマゾン川流域の「パンタナル」と「多摩川」の2 つのゾーン展示において、生物を間近で観察できる水槽(AQUA)と実際に現地で撮影した映像や音で自然風景(SCAPE)を体感できる展示空間「AQUASCAPE」を企画・演出しました。
従来型の水族館や動物園の多くでは「生体展示」が主役となり、背景の「映像展示」はあくまでもモニターという枠の中の説明的な要素となっています。
また、それらの多くは限られた時間の中で文字やナレーションが映像を補足する番組的なコンテンツが主流です。
近年の撮影・投影技術の進化により、高解像度の映像を大型の空間に投影することが実現し、等身大でも自然な再現性をもったリアリティのある表現が可能になりました。
P.I.C.S. TECHは映像を「建築や空間を構成する要素」ととらえることで"空間拡張"や"空間体験"することのできるツールとして提案しています。
本展示「AQUASCAPE」では映像や音響を「地球環境」の空間そのものを再構築するためのテクスチャととらえ、生体展示と共に感じる事が出来るようになっています。
古来から日本人が得意とする自然を「みたてる」展示を目指しました。
「青い惑星」とよばれる地球の表面の97%は海水であり、さらに、そのほとんどは氷河や地下に固定されているため、河川や湖沼など私たちが資源として利用できる真水は全体の0.01% ほどしか存在しません。
それらの貴重な淡水資源が太陽や地球や季節によって雲、雨、氷と様々に形を変えながら循環移動し、私たちの生きる森や田畑を潤し、常に新鮮な養分を運んで生命を生み育てているのです。
本展示では、熱帯雨林の森の中に葉脈のように張り巡らされた雄大なアマゾン川、そして、急流で変化に富んだ日本の河川を代表する多摩川の水辺の移ろいゆく景色や現象を展示空間で展開することを前提とした見せ方や手法を用いて撮影しました。
鑑賞者には映像をあくまでも風景や光の要素として感じてもらうために、あえて映像のカットを長く、その場所で起きている自然現象や空気感をそのまをとらえることを大切にしました。
また、撮影機材やレンズの選定に関しても投影空間において等身大で違和感のない画角の検討や撮影場所の選定を行いました。
当初、アマゾン川の映像に関しては、ありものの素材や過去の番組の素材を組合わせるという案もありましたが、高解像度のアーカイブ素材には要望を満たす素材はなく、実際に現地での撮影を行うことになりました。
未知の地球の裏側での撮影は天候や移動の困難もありましたが、結果、リアルな自然景を再現することができ、体験者がゆったりと時を過ごしながら"自然の神秘"や"デザイン"を感じることができる空間として仕上がりました。
水と森が繋がっているということ、生命と物質が繋がっていること、そして繰り返される地球と星々のリズムをまるでひとつの生物の鼓動のように感じ、思いをはせることのできる空間展示となっています。
◾︎カワスイ 川崎水族館
公式サイト:https://kawa-sui.com
所在地:〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区日進町1-11 川崎ルフロン 9-10F
営業時間:10:00 〜 20:00 (最終入館 19:00)
クリエイティブディレクター・坂本がこの撮影について『松坂實著:アマゾン大図鑑vol.8 』へ寄稿した「アマゾン川 夜行船ドン・ホセ号でのできごと」は下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.pics.tokyo/works/sakamoto_column/