「自由に、誠意をもって働くことが大事。」P.I.C.S.社員の本音トーク。

#Interview #Producer #Production Manager

P.I.C.S.で手掛けるプロジェクトや働くメンバーのバックグラウンドを掘り下げるP.I.C.S. CASE STUDY。

今回は、Creepy NutsやNumber_i、緑黄色社会、OmoinotakeのMVなどを手掛ける鈴木ルームよりプロデューサー・プロダクションマネージャーの3名にフォーカス。
入社1年目〜10年目社員で構成され、社内でも若く勢いがあるチームの彼らに、仕事のやりがい、日々の工夫、そして今後挑戦したいことについて聞きました。

鈴木麻雄 (10年目 / プロデューサー)
入社年:2015年
出身地:東京都
大学:駒沢大学 経営学部
好きなこと:ゲーム、お酒を飲むこと


安達勇樹 (6年目 / プロダクションマネージャー)
入社年:2019年
出身地:宮城県
大学:尚絅学院大学 文学部
好きなこと:睡眠


岩本晃一 (4年目 / プロダクションマネージャー)
入社年:2021年
出身地:大阪府
大学:立命館大学 映像学部
好きなこと:身体を動かすこと全般

それぞれの学生時代を経て、映像制作の世界へ。

ーー学生時代は何に興味がありましたか?

鈴木:当時の趣味はサッカーとかフットサル。高校までしか部活はしてないし、大学の時は酒ばっか飲んでバイトしてました(笑)。映像は特に好きじゃなかったし、映画なんて年間1本見るかなぁくらいで…。ドラマも見てなかったし、MVも、見るよりは音楽を聴いてるって感じでしたね。

安達:大学ではバスケやってました。趣味はそんなにないけど、体を動かすのは好きでしたね。

岩本:小中高9年間、柔道をやってました。柔道2段を持っていて、高校卒業した時点で元々は消防士を目指していたのですが色々あって諦めて。2年くらい空白期間があったんですけど、その間に受験勉強して大学に入りました。


ーーみなさん、スポーツに打ち込まれていたんですね。ちなみに学生時代から映像業界への就職を視野に入れていたんでしょうか?

鈴木:そもそも映像制作会社に入るつもりは微塵もなくて、別業界の企業を受けてたんだよね。その中で入社しようかなと思っていた会社の内定者懇親会に行ったら、そこにいた先輩に延々と学歴の話をされて「アレ...?」ってなって(笑)。その話を仲の良かった広告業界の先輩にしたら「そんなところいかなくていいよ、お前はプロデューサーになれ!」って言われて。「プロデューサーってカーディガンを肩にかけてる人ですか?」って聞いたら、「そうだけどそうじゃない」って言われた(笑)。

1週間後にはその先輩とP.I.C.S.のプロデューサーと3人で飯食って、その1週間後にP.I.C.S.に遊びにきて、1週間後に撮影現場の手伝いに行って、1週間後に面接受けたら受かって、よく分かんなかったけど入れたね。本当、勢いだけで入社しました!

安達:僕は映像には全く関係ない大学だったんですけど、大学が映画のロケ地になった時に制作部・エキストラの募集を見て、楽しそうだったから参加したことがあって。それが映像に関わるキッカケといえばキッカケでした。

元々普通のことをやるのはあんまり興味がないなと思ってたので、やってみよう!という思いで入りました。ただ、普通のサラリーマンとか地元で仕事することは考えられなかったので、東京にとりあえず行ってみたーい、みたいな(笑)。

岩本:学生の時はディレクターかカメラマンになりたいと思ってたんですけど、でも色々やっていくうちにディレクションは向いていないかもと考え始めて、早い段階でディレクターはやめました。
カメラが好きだからカメラマンやれたらいいなとも思ってたんですけど、実際アルバイトでプロの現場にお邪魔した時に、ものすごい体力勝負の仕事だと感じたので、それも諦めて、プロデューサーを目指せるP.I.C.S.に応募しました。

そういえば、面白いのが、最近改めて自分の通っていた学部のページを見たら、学生の理念、方針みたいなところに「プロデューサーマインドを育てる、見つける」って書いてあったんですよ。
そういえばそんなこと言われてたなーって。社会にでた時に多様化している映像に対して幅広くアプローチできるマインドを持とうみたいな。映像に携わる色々なポジション全てを浅く広く学べる学部だったのが、今に繋がってるのかもしれません。


ーー安達さんと岩本さんは学生時代に映像制作の現場に行った経験があったとのことですが、映像業界での仕事について入社前と入社後でギャップがありましたか?

安達:ギャップはそんなになかったです。いうほど映像を見てきたわけでもないし、音楽も聴いてきてないし。大学時代、映画の撮影に参加したので、撮影のつらさとか、時間が早いし遅いみたいなのも経験しましたし、畑は違うけど全然そんなにはって感じでした。

岩本:僕はありました。学生時代に自主制作でMV、外部のアルバイトとかを経験しましたけど、実際自分がプロダクションマネージャーになった時に、守備範囲の広さに驚きました。ここまで細かいことをやるんだ、という。
良いギャップでいうと、自由だなって。自分の裁量でここまで決めて良いんだっていうギャップがありました。働き方は特に。誰かに言われてやる、というよりは自分で考えてスケジュールを決めて、自分でやらなきゃいけないことを考える必要があるので、自由だなと感じました。

鈴木:そもそも映像業界の知識がなかったから、俺は特にはない!(笑)


ーちなみに、安達さんと岩本さんが入社1年目の時の業務で、大変だったことなどはありますか?


安達:僕は入社前にMacのパソコンすら触ったことがなかったので、そこから苦労しました。Adobeソフトももちろん使ったことがなく、かといって誰かに教えてもらえるわけでもなかったので、同期に聞いたり自分で調べながらやってました。


ー安達さんが入社した当時は今みたいな入社研修は行われていなかったですもんね(笑)。


安達:入社して一番初めにお願いされた業務は、ロケ地への電話問い合わせだったかな?僕が苦戦したのはお弁当発注ですね…。撮影当日のお弁当って、スタッフさんにとってのモチベーションにもつながるので、とても重要で。入社間もない頃はお弁当発注を任されていましたが、ある時の撮影で監督初め多数のスタッフに「まずい!」って言われてしまって...。そこからは唯一、僕がやらなくていい仕事として公認されました(笑)。

あとは、地方ロケ撮影のために100人規模の新幹線チケットを購入したこともありましたね。お盆時期と重なってたので座席が全然空いてなくて、窓口で駅員さんに相談しながら買ったら、3時間くらい経ってました(笑)。大変だったけど、今となってはいい思い出です!

岩本:僕はスタッフさんへの連絡でした。個人的に電話は得意ではなく苦手意識があったので、1回の電話で伝えなきゃいけない事、聞かなきゃいけない事を事前にまとめたりと、めちゃくちゃ慎重に電話をしていました。
初めて案件の制作チーフを任せてもらえたのが1年目の12月で年末年始進行という事もあり限られた時間の中で詰め込んだ進行となるのですが、案件を進めるにつれて連絡をしなきゃいけない外部スタッフがどんどん増えていき、ひたすら連絡をして1日を終えるなんて事が多々ありましたね…。
それまでやってきたセカンド業務とは違い、チーフ (※)としてフロントに立って外部スタッフとやり取りをする事の難しさを痛感しました。
※数名いるプロダクションマネージャーをまとめるリーダー

ひとりひとりがいろんな方向を向いても、「信頼」があれば最後にはまとまる。

ーーここからは今されてるお仕事について詳しく聞かせてください。P.I.C.S.ではプロデューサー1名とプロダクションマネージャー数名でチームを組むことが多いと思いますが、それぞれの役割の違いを教えてください。

鈴木:色々あるけど、プロデューサーはどちらかというと、クライアントとコミュニケーションを取る回数が多くて、プロダクションマネージャーは現場スタッフとコミュニケーションを取ることが多いかな。
プロデューサーは、指揮・進行から完パケのクオリティまでをクライアントと一緒に全体を管理する。プロダクションマネージャーは、目の前にいるスタッフさんたちそれぞれのやりたいこと、得意なこととか、バランスをとりながら、現場の中で全体の中心に立ってスタッフみんなとコミュニケーションをとるのが一番の仕事。ただ、プロデューサーが出ていかないといけない現場もあるし、プロダクションマネージャーがクライアントの対応をすることもあるしね。誰とメインで話すかの違いが1番わかりやすいかも。
あとは、全ての責任者がプロデューサー。ただ、完全に切り分けるんじゃなくて、プロダクションマネージャーにも同じマインドで動いてほしいとは思ってます。

安達:仕事を取って来てくれるのはプロデューサーですよね。ただ、スタッフさんとの関係性によっては僕らにお仕事の相談をもらうこともあるんですけど、それをちゃんと仕事として受注を受けるのはプロデューサーの仕事です。


ーープロデューサーとプロダクションマネージャーが連携する上で大事なことはなんだと思いますか?

鈴木:信頼。信じること。俺も多くを言わないから「任せたよ」って言ったら後輩たちからしたら『ちゃんとやらなきゃいけない』ってプレッシャーにもなるだろうけど、『麻雄さんが細かいこと言ってこないから、自分たちで決めて仕事ができる』ってプラスな思考にもなるでしょ。後輩たちからしたら『麻雄さんだったらどんな状況でもうまく調整してきてくれる』みたいな安心感に繋がるんじゃないかなと。失敗は許されない、っていう緊張感は絶対みんな持ってるから。結局は信頼関係なんじゃないかな。


ーその関係はどうやって築いてるんですか?

鈴木:嘘つかない、誤魔化さない。一生懸命仕事をすること。先輩と真摯に向き合う!

安達&岩本:はははははは!(笑)

鈴木:結局は誠意!プロデューサーだから、プロダクションマネージャーだからじゃなく、ちゃんと社会人であれ!


ーー誠意を持って仕事、人と向き合うことはこの業種に関係なく大事なことですよね。
次は、お仕事する中で大変なことがありましたら、教えてください。

鈴木:プロデューサー目線の話だと、クライアントや世間が持ってる期待値以上のクオリティを実現するための表現方法を模索することかな。仕事の参考にいろんなMVを見たりしてるけど、企画にあったスタッフをアサインするために、誰がどんな表現を得意としてるのか?を意識しながら見たりとか。クライアント、監督のやりたいことを実現する一方で、予算の考え方やスケジューリングにも気を配る必要があるよね。そこはやりがいのある部分でもあるけど!

あとは、チーム全体のモチベーションやコンディションを保ちながらプロジェクトを進めていくのも大変。一人ひとりと密にコミュニケーションをとったり、必要に応じて俺が動くこともあるから大変ではあるんだけど、そこはプロデューサーとして大切な部分だと感じてます。
…あ、でもやっぱり一番大変なのは早起きすることかも(笑)。撮影自体は楽しいから好きなんだけど、撮影の日は朝早いからさ…。PM時代から唯一変わってないのはそこだな(笑)。

安達:仕事にテンプレートがないことです。同じスタッフと仕事をするとなっても、案件ごとに毎回全部が違うので。あとは、チーフを担当する案件では、スタッフさんたちのスケジュールも自分で調整するのですが、自分が間違えると全体の進行が遅れたり、周りに迷惑がかかってしまうことになるので、そういうところにも苦労します。
プロダクションマネージャーは、全スタッフをまとめる立場だからこそ、みんなと信頼関係を築くのも大変です。いろんな側面で毎回大変な思いをしてます…(笑)。

岩本:スケジュールが自分の裁量だけで決められないという所です。クライアント、スタッフ、ロケーションなど関わる全ての人、物事のスケジュールで僕たちのスケジュールも決まるのでスケジューリングが大変かもしれません。また、安達さんもおっしゃっていた「スケジュール調整」は「関わる人たちのOKがもらえた候補日」の中からの調整であって、全てが自分の裁量ではないという事ですね。
いろんな状況で変わるスケジュールの中で、自分の余暇の時間をいかにうまく設けられるかが大事だと思いました。


ーールーム内は一体感があるように感じとれますが、業務中はどんな雰囲気ですか?

鈴木:俺は具体的に指示を出さないけど、こういうこと考えなよとか、こういうところ気にかけてねとか、フワッとしか伝えないことを、ちゃんと各々が受け止めて咀嚼して行動に移してくれたり、工夫してくれてるかな。
俺自身が「これやれ、あれやれ」って言われて嫌だったから、極力言わないようにしてる。自主性を持って能動的に、それぞれが社会人としてのスキルを磨いてほしいから、自分で考えて、能動的に動いてもらうようにしてます。確認もするけど、しょっちゅうは聞かないし、やばいだろうなって思った時だけ(笑)。足並み揃えて、自分の立ち位置を考えながら、行く時は行って止まる時は止まる。みんなが同じスピード感で仕事ができるようには心がけてるかな。

あとは、去年俺が精神的に参っていた時期があったんだけどルームの子たちの強さを改めて感じた。
麻雄さんが元気じゃないと調子が狂うと言われて、俺が元気じゃないとダメじゃんって思って。キャラクター的にも俺が一番喋るけど、それが実務的な意味をなしていたんだなって。

安達:部活っぽいです!仕事のための組織というよりかは、みんなが楽しくいろんな方向を向きながらもまとまりながら。

岩本:だけど、ガチガチに統制されてるわけでもないですよね。

鈴木:あとは2人(安達と岩本)は自覚ないと思うけど、俺はこの2人がいるから、ちゃんとチームがまとまっていると思ってるよ。去年うちのルームでやった忘年会に2人が来れなかったんだけど、みんながずっと2人のことを話してて。俺的には会社とか仕事の話をするつもりはなかったんだけど、2人の仕事を褒めたり、その会は2人の話題が絶えなかったんだよ。俺が感じたのは、チームの子全員持ってるものがそれぞれ違うから、自分以外の持ってる良さに気がついて、褒め合えてるのかなって。だから、俺が持っていない部分を持っているこの2人にはいてもらわないと困るし、いてくれることですごく安心感を与えてもらってるかな。一人一人の存在感がしっかりあるよね。

安達:涙なしでは聞けないです・・・(笑)。


ー(笑)。会社全体の雰囲気はどうですか?


鈴木:今では人数も増えてきて、規模も小さくはなくなってきたよね。最近、上層部の人たちの意識とかもそうだし、会社が変わってきた気がする。まぁ、俺は若い子たちが働いてて楽しそうだから、嬉しい!

未来への展望、そして未来の仲間へのメッセージ。

ーー仕事する中で感じるやりがいを教えてください。

鈴木:作品が世に出た時。でも案件のジャンルによって違うかな。ライブならその現場でお客さんが見てくれたリアクションが見れるところ。MVとかCMは実際見てる人の横にはいないけど、スタッフさんやクライアントからのリアクションはもちろん嬉しいし、(YouTubeなどで)再生回数が伸びるのは嬉しいね。自分の学生時代にはMVを見て音楽を聴く感覚がなかったから、わざわざMVをみてくれてる、ということは嬉しいです。

安達:やっぱり作品が世に出るのは嬉しいです!最近ちょっとずつ変わってきたのは、スタッフさんとの関係性が変わってきてることを感じた時の方が、今仕事をやってて楽しい瞬間。この年次になってからようやく色々話せるようになってきて、仕事以外の話で盛り上がったりとか、連絡をもらえた時にやってて良かったなと感じます。「認めてもらえるようになった!」ということが嬉しいです。

岩本:僕も同じで、世に出るタイミングに1番やりがいを感じてたけど、今はカメラマンさんに「また一緒に仕事やりたい」と言ってもらえたり、ニックネームで”がんちゃん”って呼んでもらえたり。スタッフさんたちが親しく接してくださる関係値を作れているのが嬉しいです。 


ーー今後チャレンジしてみたいことなど、個人の目標はありますか?

安達:僕は今のところプロデューサー志望ではないのですが、自分が好きなオンライン編集を頑張って、自分で手を動かせる人としてそれを強みに仕事をして行けたらいいなって。映像業界全体の動きも踏まえて、制作会社としてポスプロの方の業務まで出来るようになったら楽しそうだなって思ってます。

岩本:個人の目標でいうと、大学の時に一緒に映像をやってた仲間が同じ業界に散らばっているから、僕が中心になって集結させたいです。仕事として、学生時代に培ったものを生かして映像を作りたいです。あと、宇多田ヒカルさんの案件に携わることができたら、もう思い残すことはないです(笑)。

鈴木:俺は特にはないかなぁ。だけど個人的には、P.I.C.S.は保守的ではない会社になってほしい。
俺が制作の時にみてた先輩たちや会社って尖ってたから、どんな仕事も光って見えたし会社全体に独特な活気があったかな。いろんなジャンルの仕事が会社にいただけるようになってきたからこそ、先輩たちみたいに自由で型にはまらないP.I.C.S.らしさみたいなものを表現し続けていきたいな。

ーーでは最後に、一緒に働く上で大事だと思う考え方や心構えを聞かせてください!

岩本:個人的には好き、興味、ワクワクという気持ちを忘れないでいてほしいです。皆さんがそうではないと思いますが、僕は映像が好きでこの仕事に就いたので、エンタメを作る側の人間として自分が携わるものを好んで、何かしらワクワクの気持ちを持って一緒に仕事をしていきたいです。

安達:全ての業務に対して責任を持つこと、これしかないですね。自分のせいで、案件に関わるたくさんの人たちに迷惑がかかるかもしれない、ということを常に意識すること。しっかり責任感を持ってれば、手を抜いて仕事をするということはできないと思うので!

鈴木:映像が好きというモチベーションがあるのは良いけど、それはあくまでオプション。仕事は責任感でするもので、モチベーションは自分のパフォーマンスをブーストさせる時だけ使うものだと思ってる。

あと、この業界だからってことでいうとPCのスキルはあった方が良いけど、それができてもコミュニケーション能力がなかったり、嘘ついちゃったり、真摯に人と向き合えない人は難しいかもね。

俺が新卒採用の面接官をした時に安達もいたんだけど、まっすぐな姿勢が印象に残ってて。「一生懸命頑張ります!!」しか言ってなかった(笑)。「これができます」っていう発言は一回もなかったんだよ。映像業界に対して、キラキラした印象を持っている子がいる中で、仕事に対していい意味で期待してない雰囲気を感じたから『この子は、どんな仕事にもまっすぐ向き合えそう!』って印象に残ってたかな。

逆に、がんちゃん (岩本) が入社した時は、ソフトも使えて映像の知識もあって、プロデューサーになりたいって野心を持ってる子が入ってくると聞いて。
両極端だけど、がんちゃんみたいに志が高い子も、安達みたいにまっすぐな子も、P.I.C.S.に来てくれたら嬉しいよね。


文:P.I.C.S./撮影:加藤雄太